「望月色(もちづきしき)です。よろしくお願いします」
まだ私が、群青色のスカートをなびかせていた十七歳のときだ。
漫画みたいにやってきた転校生に、それこそ漫画みたいに一目惚れをした。
人生、最初で最後のひとめぼれだった。(本来私は、一目惚れなんてするタイプじゃないのだ。)と同時に、それは初恋だった。
理由は、知的な雰囲気が、好きだったから。それだけなのかもしれない。
でも人を好きになる理由なんて、今でもそれで十分だと思う。
*
視界の隅に、クラスの派手な女子グループたちが望月くんを取り囲んでいる様子が映る。
決して騒がしいほうじゃないのに、望月くんはその華やかな場所が、とても似合っていた。
というより、どこにいたとしても、望月くんはその場所に似合うように、合わせられるのかもしれない。