私といえば、別に奥手というわけではないのに、初恋に落ちてから数カ月しても、依然として望月くんと喋れないままだった。
でも、夏休みになる前日の放課後のこと――教室でふたりきりになった。
というのも私たちは日直だったからだ。
でも、何を話せばいいのかわからないまま時間だけが流れた。
喋ったこともないのに、私が話したいことは「好き」しかなかった。
望月くんは、日誌を書きながらケータイ電話を触っていた。
誰かにメールをしているようだった。
見つめすぎたせいだろう、しばらくして、ぱちりと視線が重なった。
何か話さなきゃ。
私は焦って、顔を真っ赤にしながら「あの……友達になって」そう口走った。
そんなのはきっと、告白と一緒だったけれど、転校初日から人気ものになった望月くんにしてみれば日常茶飯事だったのだろう、「いいよ」と軽く笑った。