「どこ行く? 心さんは、どこか行きたいとこ、ある?」
それでも私は一縷の希望を込めてきく。
「どこでもいいよ」
だがやはり、打ち砕かれることも知っていた。
君はいつもそうだ。どこでもいい、何でもいい、澪の好きなものでいい。
それが優しさと信じて疑わない。
最もやさしさ以外の何者でもないのだけれど、私はその「やさしさ」に無性に苛立ってしまい、ときどき、君にひどい言葉をぶつけたくなる。
「心さんは、行きたいところ、一つもないの?」
ちょっと嫌味な言い方になってしまうことに、最近は罪悪感すら抱かなくなってしまった。だって心さんは、それが嫌味だなんて思いもしていない。